AKIRA


 俺の心がざわめきを増す。抑えきれないほどの嫉妬の嵐で、渦巻いている。

 なのに、俺の心の内を知ってか知らずか、服部は、何事もなかったかのようにベンチに戻って来た。

「あ、服部君もラブラブだったね~」

 そう言って木下が服部を茶化す。

 うるさい、木下黙ってろ。

「あはは、そう見える?」

 何言ってんだこいつら……訳わかんね。どこがラブラブだったっつうんだよ。

「お前、いい加減に女子ベンチ戻れよ」

 俺は自分の握るタオルに視線を落したまま、呟いた。

「え? なんで?」

「なんででもだよ!」

 少し荒げた言葉に、木下は何の反抗もせず、いそいそと帰っていく。

「なに怒ってんの?」

 あっけらかんと服部が聞いてきた。

 お前のせいに決まってんだろうが……俺は、まだ顔を上げられない。

 でも、聞かずにはいられなかった。晶のあの動揺振りは、普通じゃない。

「なんて言った?」

「は?」

「とぼけてんじゃねぇよ……さっき、あいつに、なんて言ったんだよ」

 下から睨みあげるように、俺は服部を見据えた。さっきまでチャラチャラしてた表情が、スッと真剣に変わる。

「なに、気になる?」

 当たり前だ、そう言おうと思ったら、服部の方が先に、俺の言葉を遮った。

「俺さ、お前のそう言うとこ嫌い」

「はぁ?」



 何言ってんだコイツ。

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