AKIRA

「アキの前では平気そうな顔してるくせに、好きじゃないっていう態度なくせに、いざとなるとこういうの……陰で嫉妬全開とか、なんか嫌い」

 お前に何がわかるんだよ。俺だって声を大にして言いたいんだよ。でも、言えないのは……あいつの迷惑そうな顔を見たくなくて……。

 そう思ってたら、スッと服部が耳元で囁いた。

「絶対に俺の方が好きって気持ち上だから」

「なっ?!」

 俺の方がっ!

 服部を見上げ、そう言ってやろうかと思ったけど、さっきまでの真剣な表情がそこにはなくて、妙にへらへらしてたから、そんな気がなくなった。

 力が抜けるって言うか、どこまで本気なのかも掴めない。

 ここまでサラッと思ってる事言えるのは、なんでだ。

「俺、絶対に渡さないよ」

 追い打ちをかけるような、その言葉に俺は、更に強く拳を握る事しか出来ない。

 俺の思ってること全て、服部に言われてるようで、悔しさが堪らなく込みあげてくる。

 同じ気持ち……だから悔しい。なにも進めてない、自分自身が腹立たしい。

 イライラする。

 そう感じている傍から、服部は俺の目の前を進んでいく気がする。今もまた、その笑顔で、晶に向かって手を振っている。

 俺には出来ない事を、平気でやってのける。





 でも、俺だって譲れない。




 絶対にだ。




 そう思い、俺は服部を残して立ち上がると、ゆっくりと寺倉先輩の方に向かった。

「先輩」

「ん? なんだ、江口」

「ちょっと、相談があるんですけど……」

「いいよ、何?」




 俺も渡さない。



 晶の隣は、俺だ。







~ もやもや:陽side FIN ~

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