AKIRA

晶side

~ 指名:晶side  ~


 啓介に、あんなこと言われてから、はっきりしなきゃダメだって思ってるのに、何も言えないままだ。

 相変わらず、啓介はいつものように明るいし「俺のもんになれ」なんて言葉も忘れてるみたいだった。だったら、あえて言う必要もねぇんじゃねぇかって思えて、逃げてる。

 俺は変わらず、陽を意識してばっかで、なにも進めてねぇし。

 京子も、啓介も……なんであんなに、真っ直ぐなんだろう。まぁ、啓介の場合、どこまでが本気かってわかんねぇ部分あるけどさ。

 でも、俺だけが、なんか、情けねぇっつうか、さ。

「こらっ、加藤! 考え事してる暇ないわよ! しっかり聞きなさい!」

「は、はい! すみません!」

 やべやべ、そうだ、もうすぐ県予選も近くて、みんなピリピリしてて色恋なんか言ってる暇もないって感じだからな。

 平塚先輩が「まったく」そう呟いてから、次々と選手の名前を挙げていく。

「ダブルスに呼ばれた人はそれぞれ練習に戻って」

「はい」

「じゃぁ次。シングルに三年生から三宅先輩、本橋先輩、野口先輩、二年山本、川辺、一年木下、以上です……それから、ダブルとミックス選手は学校のコートで練習しますが、シングルの選手は来週から市民コートへ行ってもらいます」 

 え、ちょっと、待て……俺の名前が呼ばれなかったぞ? あれ、もしかして、外された?

 そう思っていると、やけに痛い視線を感じた。ふと見れば、またもや亜美だ。

 なんだよ、勝ち誇った顔しやがって……。

 亜美は、つつっと横に寄って来て笑う。

「はは、残念ね、私は来週から陽とあっちのコートよ」

 そう耳元で囁いた。
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