AKIRA

 でも、もしも俺が亜美だったら、やっぱ納得したと思えねぇし。いいんじゃねぇのって思えた。

「ま、まぁ加藤がそう言うんなら……」

「じゃ、今すぐ!」

 意気揚々に亜美は言ったが、平塚先輩は首を横に振った。

「ま、勝った方がってのはわかったから、勝負はいいけど、でも、今日はダメ」

「どうしてですか」

「ちゃんと練習メニューは出来てるし、今からじゃ時間的にも無理だから。それに何より、あなた達二人の為にコートや時間を明け渡して他の選手が練習できないなんてダメよ」

 先輩の言う事は間違ってない。亜美もその言葉にはなにも反発せず、黙って気持ちを静めているようだ。

「そうね」

 平塚先輩は、手元にある予定表を見ながら、言葉を繋ぐ。

「明日はちょうど土曜日だし、部活練習も昼からになってるから、午前中でよければ私が審判するけど、それでいい?」

 その言葉に、亜美は素直に「はい」と頷くと、また俺を睨む。

 どうしてこうも、敵視されるのかわかんねぇんだけど……別に俺、誰にも陽が好きだなんて言ってねぇし。特に俺たちが仲睦まじいって訳でもねぇし……。

 あ、もしかして。

 入学式か? あの日、陽が俺を保健室まで運んだって言う、あれなのか?

 つっても、もう一カ月以上も前の話だろ。

 あれから、そんなに会話があったとも思えねぇ……。

「じゃ、加藤もいい?」

「あ、はい。大丈夫です」

 まぁ俺も、それでいい、そう思って頷き返した。



~  指名:晶side FIN ~
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