AKIRA
どうせ、シングル枠が一年には一つしか開いてないって聞いてたし、服部もシングルだし、ここで俺が抜けますよって言ったら、寺倉先輩は喜んでたな。
俺が言うのもなんだけど、シングルに二人の実力者、どちらを出すか先輩だって悩んでたはずだ。それに、試合最後の三年を削る訳にもいかなかっただろう。
「まぁ落ち着けって、そのおかげで服部もシングル出れるし、一石二鳥って言うか」
「だったら俺もミックスに」
「無茶言うなよ」
寺倉先輩の困った顔を見て、服部もようやく諦めた表情を見せた。そして俺を睨んでくる。
「お前、アキの足引っ張ったらゆるさねぇぞ」
「まさか、俺が引っ張る訳ないじゃん」
そう言って、にっこり笑ってやった。
「なぁ、やっぱ俺がアキと……」
「い・や・だ・ね!」
ここまでくると、服部の言うとおり、俺も根性汚ねぇな。でも、晶と一緒に出来る、それだけがこの高校に来た一番の理由だったから、譲れない。
でも、例え服部の存在がなくても、俺はミックスに行って晶を選んでたんだ。成るべくしてこうなったんだよ。諦めろ、服部。
「じゃ、そゆ事で、はい、集合!」
先輩が部員を集め、今度の予選の組み合わせを発表しはじめる。
次々に、予選選手の名前が発表されていく。
たぶん女子も、今、話してるとこだろう。
晶、俺はお前と一緒に、コートに立ちたいんだ。