AKIRA
「じゃ、来週からダブルとミックス選手は学校のコートで練習。で、シングルの選手は来週から市民コートへ行ってくれ」
思い切りブーイングを叩きつけたのは服部だという事は言うまでもない。
「なんで俺がアキと離れて練習? 納得いかねぇ~!」
言いながら服部は俺を睨み続けるけど、後の祭りだよ。
そう思っている間にも、女子コートからも悲鳴のような声が聞こえた。でも、もう俺の気にする範囲じゃねぇし。
久しぶりに気分いいかも。
今まで散々イライラしてて、まともに晶の事、見ていられなかったからな……って、俺、また思いっきりストーカーみたいな妄想。
***
女子は既に練習を終え帰った後だった。
もう八時をまわっている。男子もようやく練習が終わり、コート整備も済んだ。コート内を照らしていたライトが消され、一気に闇が訪れる。
空も暗く、星が瞬く。
あの時のような星空だ……晶と行った、夏祭りの……。
「って、やべ」
俺、晶とキスした事思い出しちまった……やばいくらいに今、俺顔真っ赤だぞ。
よかった、ライトが消された後で……明るかったら変な妄想してる奴にしか見えねぇ。
片づけた後、部室に戻った俺たちは、それぞれが帰宅の準備も済ませ、部員もパラパラと帰っていく。
「お疲れっしたー!」
「お疲れさ~ん」
そんな中、寺倉先輩が一人、着替えもせずに、椅子に座ったまま大きな溜息をついていた。
「どうしたんですか?」
そう先輩に聞くと、やはり困ったような顔をした。
「あ、俺をミックスに出したくなりました?」
服部もまだいたのかよ……つうか、先輩が代えるって言っても俺は代わらねぇっつうの。
「いや、それはない」
その一言で服部は「そうっすか」と、がっくりと肩を落とした。