AKIRA


 あまりにもあっさりと言うもんだから、一瞬、何のことかわからなかった。

 でも次の瞬間、俺は、言われた事の重大さに驚いて、立ち止ってしまった。

 はぁ~~~~っ?! な、な、なんで京子知ってんの? 

 一気に体中に火照りが伝わって、絶対に耳まで赤くなってる! 

「な、な、な、な、なな」

 うまく言葉も出てきやしねぇ、あ、ヤバイ、マジ、焦る。

「あれ? 知らないと思ってた?」

 京子も立ち止まり、にっこりと笑顔で振り返る。俺は思いっきり何度も首を縦に振って見せた。そしたら、更に笑顔になって。

「バレバレだよ~アキ」

「ば、バレバレ??」

「うん、バレバレ」

 そう言って、俺に近付くと、真っ赤になっているであろう顔を、じっと見つめてくる。

「いつも江口君ばっか見てるし、教室でも江口君の姿を目で追ったり? で、そのおかげでアキは人の話聞かないの。でもね、アキ、相手の見てないところでいくら目で追っかけても、気持ちなんか伝わらないよ?」

「俺は、べ、べ、別に……」

「だって、アキも気付かないでしょ?」

「な、なにを?」

「まぁ、それはいいんだけど」

 いいのかよ! そこまで振っといていいってなんだよ!

「でもね、だから私も安心できてるって言うか……うん」

「あ、安心?」

「そう、服部君はいつもはっきりアキのこと好きだって言うじゃない? 辛くないって言ったら嘘になるけど、でも、アキの気持ちが江口君にあるんだって思ったら、服部君には悪いけど、私、安心して見てられるんだよね」

「……京子」

「えへ、私って結構したたかなの」

 京子は、可愛く舌を出してはにかんで見せた。

 か、可愛いじゃねぇかコノヤロー……って思ってる場合じゃねぇ。待て、待て、ちょっと待て。京子が知ってるって事は……まさか……。



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