AKIRA

「あんたらさ、こんな事して許されると思ってんのかよ。しかも好きな男の彼女に、こんな事したら余計に嫌われるだけじゃねぇの? それが嫌だったら、いい加減、諦めろよ」

 なんか虚しい……自分に言ってるみたいだ……ちくしょう、なんだよ。

「あ、あんた一年の、テニス部の加藤?」

「は? そうだけど文句ある?」

「え? 加藤? やばくない?!」

 やばいってなんだよ。

 なんか、さっきまでは逆光で顔が見えなかったらしい。目の前の先輩が、怯えたように俺を見据えている。

「なにがやばいのよ?」

「何がって、こいつ、服部の女じゃない?」

 あ、またプチっていった。

「はぁ? 誰が啓介の女だって?!」

 こいつら、更に俺の傷口に塩塗る気かっ!!

 そう思って、ハッと思う。そう言えば啓介が言ってた……俺を傷つけたら、何をするかわからないってファンに言ったって。

「やばいよ、服部に殺される!」

 殺さねぇだろ。バカだ、こいつらも。

「あ、あたしらはあんたに何もしてないからね! その木下にしたんだからね!」

 そう言ってあたふたと逃げていく先輩方……くっだらねぇ。

 俺は、ふぅっとため息を落として、後ろで、まだ地面にケツ付けてる亜美を見やった。

 しゃぁねぇな……俺は、亜美に手を差し伸べる。

 こいつは、何も悪くない……悪くないんだ。

「腰でも抜けたか? ほら、起こしてやるよ」

 でも、亜美は俺のその手を弾いた。

「自分で立てるわよっ!」

 ちっ、可愛くねぇな。そう思いながらぼうっとしてたんだ。亜美が立ち上がって、俺の目の前に立って、上目遣いに睨む。

 なに? 何でいつもの如く睨んでんの? 俺、あんたを助けたんだよ? お礼を言われる事はあっても、睨まれる覚えはないんだけど……。

「誰も助けてなんて言ってないわ!」

 まぁ、そうだけど……知らん顔も出来ねぇじゃん。あんだけ囲まれてて、ほっとけねぇっつうの。

「あんたなんか……」

「は?」

 亜美が震える拳を握りしめている。
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