AKIRA
俺がまだ中学三年の時、熱を出して寝込んだ事があった。
こんな時、晶が傍にいてくれたら、なんて思いながら、意識が朦朧とした中、夢を見てた。
あいつと一緒にテニスをする事、一緒に笑い合う事、一緒に愛し合う事。
そんな夢の中でも幸せ気分で、それでも熱にうなされて。
あの時、まだ木下は俺の部屋の隣で、鍵が開いている日は窓から侵入してきていた。何度言っても直らなくて、半ばあきらめ半分、好きにしろと言っていた。
そして、あの日だ。
その朦朧とした意識の中で、俺に近付く木下を、晶と間違えたんだ。
自然に、俺の腕がこいつの髪を撫で、引き寄せた。
唇が触れた後、俺はハッとしたのを覚えている。自分の腕の中に居るのが晶じゃないって気付いた。
激しい自己嫌悪が襲ってきて、取り返しがつかない事をしたと思った。
すぐさま木下の体を引き放し「ごめん」と呟く。
それが、あの時の記憶だ。
「あれは、だから……事……」
「私、あの時幸せだったのに」
そう言われても、あれは事故のようなもんで、俺の気持ちは今も昔も木下にはない。