AKIRA

「ごめん、でもあれは……俺がどうかしてて、お前を好きだとか、そういう感情はないよ」

「なんでよ!」

「なんででも、頼むから忘れてくれ」

「私、ファーストキスだったのよ! 忘れられる訳ないじゃない! 陽だってっ!」

 そう言いかけて、木下がぐっと言葉を飲んだ。その後に続く言葉は「俺も初めてなんでしょう」と言いたかったのか、それとも「はじめてだから忘れられないでしょう」とか。

 そうだ、俺だって初めてのキスは忘れられない。

 なのに、俺ってかなり酷い事言ったかもしれない……忘れろなんて、酷過ぎるよな。それで、木下も答えを聞くのが怖いんだろうと察しが付く。

 でも、事実は事実だ。

 俺はそのまま、木下に答えるように口を開いた。

「ごめん、お前を傷つける気はなかった……俺だって、初めてなら忘れられない……」

「それは……わた……」

 木下の言葉を遮るように、俺は言葉を続けた。

「でも、それはお前じゃない」

 俺の声を聞いた瞬間、木下はあきらかに動揺していた。更に体が震え、そのまま俺の上から離れた。



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