AKIRA
「うそ……なんで? いつ?」
俺は、上半身を起こし、ベッドに座る。目の前に、木下が床にへたり込んでいた。
「だれ?」
木下が、力ない声で聞いてきた。でも、これ以上答える理由はないはずだ。
「関係ない」
「なんでよ?! なんで関係ないの?! 私はずっと陽が好きなのよ?! だから私はあのキスが嬉しかった! なのにあの時、陽は私に事故だって言った! だったら初めて陽がキスした子もっ!」
「事故じゃないよ……俺、好きだからキスしたんだ」
「うそっ!!」
その言葉を聞くなり、木下は俺に縋るように苛立った表情を向ける。
「嘘じゃない……俺、今でも、その子が好きだから……」
それでも、木下は納得がいかないようだった。
激しく、俺を揺らし「なんで!」と何度も聞いてくる。
「いつもそばに居たのは私よ! ずっと陽の事見てきたのは私っ!」
それ以上、木下に何も答えられずに、俺は困り果てていた。
その時だ。
「はいっ! そこまで!」
そう言ってドアを荒々しく開け放ち、姉貴が部屋に入ってきた。
「聖さん?!」
木下は驚き、慌てて俺に縋っていた手を放した。