AKIRA

 姉貴、いったいどこまで俺の事知ってんだよ。

「始めは、あんたが危ない奴なんだって思った」

「は?」

 何言ってんだ……なんで俺が危ないんだっつうの。

「しかも私をこの道に引きずり込んだのはあんたなのよっ!! いたいけな少女を腐女子の道に引きずり込んで!」

 何を訳わからん事を……そう思っていると、すかさず姉貴は机の上に置いてあったものに目をつけ、それを手に持った。そして、俺の目の前に堂々とかざす。

 さっき、木下が読んでいた漫画本、俺のじゃねぇ。

「な、んだよ、それ……」

「ここは前まで私の部屋だったのよ、忘れ物くらいするわよ……」

「は?」

「たまにあんたがいない間に入っては、ここに置いて行った私の本たちを読んでたの。あんた自分で部屋掃除しないから気付かなかったでしょうけど」

「マジかよ!」

「そうよ、初めてあんたがキスしてる子を見た時、男の子だって思ったの!」

「はぁ?」

 また、突拍子もない事を……。

「だから、あんたは男が好きなんだってず~っと思ってたの。でも、あのキスを見た時、すっごく胸がドキドキして、眠れない日々を過ごしたわ。私がおかしいんじゃないかってくらいにね……それでも、弟の恋だから一生懸命に理解しようとして、ボーイズラブ読むようになって、嵌って……萌え萌えで」

 何言ってんだ、マジで……つうか、人の部屋でそんなもん読むなよな!

「じゃなくてさ」

 そう言って、また姉貴は大きくため息を落として、今度はカーテンの向こうを見やった。

「なんであんたが、この部屋と変わってって言ったのかも、その時になってようやくわかった。そして、隣の部屋の女の子を見て気付いたの……どっかで見た事ある子だなって……」

「あ、それは」

「あの子でしょ?」

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