AKIRA
でも、こいつらは知らないんだ。
俺が、横に居る女が好きなんだって……そして、晶も……俺の気持ちなんか知らないんだよな。
「何、陽、怒ってんの? いつもなら聞き流す癖に~」
聞き流してんじゃねぇよ、相手にしてないんだよ。
「よ、ご両人! そのまま結婚しちまえ!」
マジ、ムカつく……。
「うるせぇつってんだろ!!」
そう叫んで机を両手で叩き、立ち上がった瞬間、佐々木が急に身を引いた。
引けよ引け、もうこれ以上、俺と木下の事を茶化すんじゃねぇ。誤解されんだろうが。
「な、何だよ、冗談だろ? 冗談。ねぇ?」
「は?」
佐々木、てめぇ、なんで晶に振るんだよ!
「さ、さぁ」
ほら、冷たい目で見られたじゃねぇか!
折角、同じクラスになれたのに、しかも隣の席なのに……久しぶりに会った印象がこれじゃ……くそっ!
俺は大きな溜息を落として、また席に座る。
「おはよう~! みんな揃ってるかぁ?!」
予鈴が鳴って、担任の先生が入ってきた。つか、俺の心配はそこじゃねぇよ。
「よぉし、初日から遅刻はなしだな! 俺がこのクラスの担任の、関口だ。よろしくな」
関口は教室を見回しながら、入学式の説明を始める。
俺は真っすぐ、関口を見据えたまま話を聞いていた。耳が関口の声を拾う。
でも、それ以外の全神経が、晶、お前に向いてるだなんて気付かないだろう。
体の芯から、封印した感情が、ぞわぞわと蘇ってくるのを止められない。ずっと前から、押し殺してきた想いが泉のように湧き出てくる。
――晶……お前は俺の事、覚えているか?