AKIRA

 姉貴が、また俺を見据える。そして、いつもは鬼みたいな姉貴にしては珍しいほど、優しく微笑んだ。

「夏祭りの日に、あんたがキスしてた子なんだって気付いた……何だかそうわかったらホッとして……」

「姉貴……」

「だからって、ここ何年ももやもやとあんたの事で悩んでた私はなんだったの?! って思ったわよ」

「あ、ごめん」

 なんで俺が謝ってんだよ……勝手に勘違いしてたのは姉貴の方なのに。

「でも、あんたが真剣に恋してるってわかって、一途なんだって知って嬉しかった……だから、渋ってた部屋を交換してあげたんだからね」

「あ、マジ、かよ」

「でも、あんたがこのカーテンを開けられないのは、まだ気持ちを言ってないから?」

 姉貴の言葉に、俺はなにも返せなかった。恥ずかしい前に、当たってるから……なにも進めてない俺自身が情けなくて。

 晶はまだ帰ってきてないみたいだけど、姉貴は、そっとカーテンを閉めた。

「でも、亜美だってずっとあんたが好きだったのよ」

「わかってるよ」

「だからってあんたに亜美を見ろなんて言わない……でも、ちゃんとはっきりしないと亜美に失礼よ。あんたの気持ちにだって失礼なんだから……」

「俺の、気持ち?」

「だってそうでしょ? 自分の気持ちに蓋をして、言えないでいるなんて可哀そう。今までずっと心に温めてきた感情なんでしょ、はっきりしないから、でも亜美もわかってるからあんなに焦ってるんだと思う。あんた自身の心に、嘘なんて必要なくない?」

「でも……あいつは……俺に昔の事を話して欲しくないみたいだから……言って傷つけるんじゃないかとか、思って」

「だらしないな……」

「そうだよ、俺はだらしないの」

 そう言うと姉貴は、ぽかり、と俺の頭を叩いた。

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