AKIRA
「よし、みんな体育館に行けよー」
その声に、俺は席を立った。
「カト、私たちも行こう」
「ああ」
へぇ、晶は「カト」って呼ばれてんのか……なんか、意外。
「陽、私たちも」
そう言って、木下が俺の腕に絡みついてきた。
うぜぇ。
でも次の瞬間、その視線が晶に向いて、驚いたような声をあげた。
「うわっ、でかい」
そう呟いて笑う。
何だ、こいつ……晶の身長見て笑いやがった?
「は?」
ほら見ろ、かなり怒ってんぞ、晶。
「何センチあるの?」
おい、待て。
そんなこと聞くなよ……でも、マジででかいな。つっても、俺の恋の障害にはならねぇんだけど。
「何で?」
「えー? 興味があったからよ。えっとぉ、陽が百八十五でしょ? それより少し小さいから~」
こいつ、俺と晶を交互に見て面白がってるのか?
だったら性格悪ぃぞ、木下。
「カト、行こう」
「あ、ああ」
「あ、ちょっと待ってよ」
木下が俺の腕からするりと抜けて執拗に追いかけようとする。腕が離れたのはいいんだが、絶対にあの様子じゃ晶は身長の事を気にしてる。
俺はアイツを傷つけたくない。だから木下の腕を掴みとり、止めた。
「やめとけよ」
「え、でも、だってぇ」
だってじゃねぇよ、マジ疲れる。
こんな奴と幼馴染なんて嫌だ。
でも仕方ない……家が隣なんだから、俺の決めた事じゃねぇし……。