AKIRA
◇◆◇
ベッドに晶を寝かして、俺はまだ震えてた。
晶、お前がどうにかなったら、俺はどうすればいい? 折角、会えたのに、俺の気持ち、まだ言ってねぇのに……。
そんな心配を余所に、先生は「大丈夫よ」と言った。
「ただの貧血、入学初日で緊張しすぎたのかもしれない」
そう言って先生は俺に安心をくれた。
「そうですか」
ホッとしたら力が抜けて、俺はベッドの横のパイプいすに座り、安堵のため息を漏らした。
「随分必死だったわね、何事かと思ったわよ」
「え?」
「彼女?」
「え、あ、違いますっ!」
――今は……って言えねぇ。
でも、そんな自信も……ない……。
先生が茶化すもんだから、俺は一気に赤くなった。
初心(うぶ)ね、先生がそう言って、俺を横切った。どっか行くのか?
「私はまた入学式に戻るけど、いい?」
「え?」
「私も新任だから挨拶があるの、だからあなたに任せてもいいかなって」
「え、あ、はい」
「君もその方が安心でしょ?」
そう言って、フフ、ッと笑った意味はなんだ?
でも、先生の言ってる事は間違ってない。他の誰にも預けたくない。晶は、俺が傍で見ていてやりたい。
俺が頷くと、先生は保健室から出て行った。そして、俺と晶だけ……昔のように、二人の時間が、ここに存在している。
晶、俺は忘れてないよ……お前と過ごした一カ月。いや、俺はもっと前からお前を知ってたけどな……お前は全然、気付かなかっただろうけど、俺はずっとお前だけを見てたんだ。
そして今も、ベッドに眠る晶を見つめる。俺の理性が吹き飛びそうだ。壊しちゃいけない、そう思いながらも、触れたくて、触れたくて堪らなくなる。
俺は、懐かしく愛しい顔を覗き込んだ。
柔らかそうな唇……一度だけ、触れた事のある唇。
俺は、その唇を指先で撫でた。
また、俺は罪を犯すのか?
黙って、晶に触れるのか?