AKIRA

晶side



 誰もいない教室。俺は自分の机を見つけた。

『加藤 晶(あきら)』

――ここか。

 そう思って、椅子に座る。

 引っ越してきたばかりで友達もいねぇけど、大丈夫か、俺。でも、高校はいろんなところから来るからな。俺だけが一人ってわけじゃねぇよな。

 今日から、俺は県立藤木高に通う、ピカピカの一年生だ。

 あ、いけね、俺じゃなくて、もといあたしは、だったっけ。

 まだ、この言い方には慣れない。何せ、小さい頃にお袋が、じゃなくて、お母さんが亡くなって、男手一つで育ててくれた親父……お父さんの言葉使いがうつったまま直さなかったもんな。

 同じテレビ見て馬鹿笑いして、お前は俺の息子だー、なんてふざけてて。

 でも全然、嫌じゃなかったし。

 それでもみんなは普通に接して……普通に?

 いや、普通だったか? 

 そう言えば、女とつるむ事も少なくて、男と遊ぶ事が多かった気がする。髪も短かったし、女として見てもらえてなかったかも……女にもチョコもらったし。

 ま、まぁそんな俺が言葉を直す気になったのは、五年の時だったか。

 隣町の男の子を、異性として気にしてからだ、うん。

 たった一カ月、仲良くしただけだったけど、アイツといるとなんか、すげぇ楽しかった。

 でも、すぐに俺は親父の転勤で転校して、この町から離れて、アイツの住んでる家も名字も知らないままだった。

 知ってるのは、名前だけ。



 アキラ……。



 そう、同じ名前で意気投合して、たぶん、あれは――……恋だったと思う。



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