AKIRA

「つ、机に書いてあっただ、でしょ。それにそんなに難しい読み方じゃ……」

「でも、人の名前って聞かないとわかんねぇじゃん。俺だってあのままじゃ読めなかっただろ? だから、あれ……なんて読むんだ?」

 って、本当は、俺の事をちゃんと覚えてるかどうかが知りたいんだけど。

「俺はもう知ってるよな、木下が呼んでたし……」

「うん」

 それは、名前? それとも、昔の俺?

「じゃぁ、お前の名前、教えて」

 何で悩んでんだよ。言えよ。お前の名前……。

「お、あた、しは……加藤」

「加藤? 何?」

 そう、アキラって言えよ。そしたら、素直に『久しぶりだな』って言える気がする。


「加藤……アキ……だよ」


 アキ……アキ? アキラじゃなくて、アキ?


 何で隠す必要があんだよ。

 なんか、再会して浮かれてたのは俺だけだったのか?


――俺、何も言えなくなったじゃん……。


「晶(あき)……そっか、アキって読むんだ」

「あ、うん」

 ここは笑っていいのか?

 怒っていいとこか?

 なんかわかんなくなってきた。

「じゃ、これから同じクラス、よろしくな、アキ」

 ただ、わかったのは、お前が昔のアキラじゃないって事か……俺の事、覚えてないって事か……それとも、他にいい奴でもいて、昔の俺と向き合いたくねぇって事か……。

 目の前の晶は、かなり困った顔してる……そか、俺との付き合いはなかった事に……ってのが正解か?

 なぁ、アキラ。

 これでも俺、少し期待してたんだけど……俺とお前は、どっか、心の奥で繋がってるって信じてたんだけど……でも、隠したいならお前に合わせる。

 傷つけたくないから――……壊したくないから。


――お前に、合わせるよ。




  ~ 今日から高校生・陽side・FIN ~
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