AKIRA
それを聞いて、俺は少し安心した気がする。だって、俺が男みたいだったってバレなくてすむし……しかも、学年七クラスあるし、ま、大丈夫だろ。
「でも、北中の子たちならたくさんいたと思うけど、知り合いいない?」
「北中?」
そう聞いて、俺は息をのんだ。たぶん、アイツが北中のはずだ。俺がアイツに出会ったのは、北中の学区内だったからな。
「いや、北中は……知らねぇ」
でもここは、そう言っとく。
どうして素直に言わなかったのか自分でもわからないけど。
「そっか、こうやって席が前後になったのも何かの縁ね。今日から友達になってね、よろしくカト」
京子は人懐っこく満面の笑顔で言った。
「あ、ああ、よろしく」
そう言っている間にも、教室はざわめきを増していった。同じクラスになる奴らが、徐々に流れ込んでくる。
その中に、アイツはいない。と、思う。まぁ、七クラスもあるしな、同じになる事のが奇跡だよな。
「誰か探してるの?」
「え?」
「だって、さっきからキョロキョロしてるし」
す、するどい。
「いや、特に……南小の奴、いねぇかな~と思って」
「ふぅ~ん」
京子は何かを疑ってるようだ。
「あのさ、さっきから気になってたんだけど……」
何、をだ……?
「なんか、カトって、男の子みたいな喋り方だね」
「え?」
どこが変だった? 俺は、ちゃんと「あたし」って言ってたぞ?
「ん、なんとなく」
「き、きのせいだ、よ」
「そうかな?」
京子はまだ首を傾げてる。
「ん、でもカトってなんか格好いいから違和感ないや」
格好いい? 俺が? 髪も長いのに? マジかよ……俺、努力足りてねぇじゃん。
「あ、格好いいっていうか、綺麗系?」
「きっ?!」
そんなこと言われたの初めてだ。俺、今、絶対に茹でダコ状態だろ。
「あ、カト可愛い、赤くなってる」
「う……ぅ」
うるせぇ、って言い返せない。思わず俯いてしまったが、なかなか顔をあげれない。綺麗って、綺麗系って、マジかっ。
「ちょっと! アキラ! 何ボサッと突っ立ってんのよ~早く教室入りなさいよ、入れないじゃない!」