AKIRA
俺は、あれからテニスを始めた。もしも、今度会う事があったら「上手くなったな」って言わせてやる。そう思って。今度はお前を走らせないぞって。
そうしたら、また親父の転勤が決まって、その土地がアキラのいる場所だって知った時。戻れるってわかった時。今度こそ、女に変わってやろうって思ったんだ。
アキラが嫌いだって言った女だけど、でも、俺は女だから、女として見て欲しくて。
髪を伸ばして、「俺」から「あたし」って言えるように頑張ったんだ。
高校は、絶対に藤木に来るって確信があった。中学の時、全国大会でアキラは優勝三連覇をしてる。だから、この県でもテニス部が強い藤木に来るって。
だから、俺は……じゃなくて、あたしは藤木を受けたんだ。
でも、まだ知られるのが怖い。
あたしが……あの、アキラだって知られるのが、怖いんだ。
「女だったのか」って言われるのが、まだ、怖いんだ。
だから言えなかった。
アキラだよ、って言えなくて……アキって嘘、ついちゃったんだよ。
~ 5年生の初恋・晶side FIN ~