AKIRA
     ***


 夏休み最終日、今日まで毎日、俺はアキラを待っていた。

 練習する気なんか全然なくて、ただ、待ってたんだ。

 雨が頬を濡らす中、俺の涙も一緒に流れる。

 マジで来ないつもりか、アキラ。

 このまま、会えなくなるのか……?

 だったら、あの夏祭りの日に言っておけばよかった。せめて、俺に気持だけでも……そしたら、こんなに後悔することはなかったんだ!

 忘れる事なんかできない。絶対に出来ない。

 そのまま時間だけが流れて、俺の気持ちが救われる事もなかった。



 あの日までは――……。



 がむしゃらにテニスに打ち込んで、中学の全国大会の切符を手にした時だ。その場所に、アキラがいたんだ。

 アイツは、テニスなんかする気はなかったと言った。なのに、なんで……ここにいるんだ。

 俺はかなり動揺したのを覚えている。

 でも、その半面、嬉しくて仕方なかった。

 また、アキラに会えたんだって思ったら、まだ、俺たちは繋がってるんじゃないかって思えたから。

 あれから二年、髪も伸びて、やけに大人びてて、そして綺麗になっていた。

 俺が見間違うはずなんかない。

 全国大会に来れば、またアキラに会える。そう思ったら、また、どんどんテニスに打ち込めた。そして見つめていた。



 綺麗になっていくお前を――。

 強くなっていくお前を――。



 アキラは気付いていただろうか、俺が、近くに居る事を。

 そして、高校受験の時、俺が前島を蹴った理由は一つ。

 ひょんな事からお前が、藤木を受けるって知ったからだった。

 今度こそ、お前に伝えられる。後悔しないように、ちゃんと目を見て言える。



 そう信じてた。





『加藤……アキ……だよ』






 その言葉を聞くまでは――……。





~ 5年生の初恋・陽side FIN ~






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