AKIRA

 そう考えて、まさかな、と思考を遮断する。

 出来ればそうであって欲しくないと願う、俺。

 でも。

「既にファンクラブだってあるのよ」

 予感は的中するもんだ、とつくづく思った。たぶん、そのファンクラブって陽のじゃねぇ?

「人気あるもんね、江口君」

 やっぱりな。

「前からこの高校にも練習しに来てたみたいだし、その時から狙ってる先輩方も騒いでるって、中学であれだけ活躍してて、しかもあの容姿でしょ。格好いいし背も高いし、女の子には優しいし、悪いとこなんてないもんね」

 そう言った京子にハッとする。もしかして、京子も好きなのか?





――陽のこと。





 何だか虚しくなってきた。

 もし俺が男なら、京子みたいに可愛い子を彼女にしたいって思うもんな。こんな俺じゃ……本性隠して、背もでかくて……良いとこ何も、ねぇよ。

「でもね、少しでも近くにいたいって女の子の本音じゃない?」

「ん、ああ」

 わかるよ、その気持ち。

「だからみんなテニス部に入りたがるの。でも練習厳しいし、今から始めても遅いからマネージャーになりたがる子が多いの……ファンの中の一人じゃなくて、一人の女の子として近くで見て欲しいっていう願望っていうか……」

 しゅんとして、やっぱ可愛いよ京子は……。

「で、どうすんの? 競争率激しいからやめんの?」

「え?」

「マネージャーって、もう決まったの?」

「ううん、まだ決まってない。希望者が多くて」

「始めから諦めてどうするよ」

「だってホントに多いのよ?」

「だからって、まだ決まってねんだろ? チャンスはみんな平等だ」

 何言ってんだ、俺は。同じ奴を好きだつってんのに、応援する気でいるのか。

「そ、そうだよね。うん、頑張ろう、かな」

 はにかんだ京子が、また更に可愛くて。だから、京子なら許せそうな気がする。


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