AKIRA
「え?」
一気に京子の顔色が赤くなった。
「な、な、何で知ってるの? 私が、その服部君狙いだって」
いや、お前さっき自分で呟いてたって。わかってねぇのか。
「は、恥ずかしいなぁ……でも、バレちゃ仕方ないわね」
おいおい、自分で言ったんだっつうの。
「に、二組の服部啓介君って言うの。江口君も人気だけど、服部君も並んで人気あるのよ」
……啓介……やっぱり、アイツか。
そっか、藤木を受けてたんだ……。
「って、え? アイツもテニス部なのかよ?!」
「え、あいつも? 知ってるの?」
「あ、いや」
知ってるも何も、アイツも南小で、でもテニスしてるなんて知らなかった。
「そう言えば、カトも服部君と同じ南小だったね」
「あ、ああ、でも知ってるっつうか、噂、だけ?」
あ、何で俺、ここで嘘ついてんだ? 何もやましい事ないのに。
「そうなんだ、服部君も中学で活躍してたんだよ」
「そ、そうなんだ、へぇ、なんだ、そっか、へぇ」
意外性を感じるけど、そんな事に俺はホッとしてるんじゃねぇよな。京子が、陽じゃなくて啓介を好きだったっつう事に、俺、かなり安心してる。
「じゃぁ、お願い。一緒に来てくれるよね?」
「え、何で」
「だって一人であの中に入る勇気ないっていうか」
あの中? ってなんだろう。
「ん、ああ、どうすっかな」
でも、啓介がいるのは、ちょっとな。
あ、泣きそう。
京子泣きそう。
なんで? なんで?
「あ、行く行く。勿論、行かせていただきます」
慌ててそう言うと、京子は嬉しそうに「やった」と、笑った。