AKIRA


 聞きたいけど聞けない、なんだかな……あ、また痛い……。

 俺の心臓、なんか、おかしい。

「よし、みんな体育館に行けよー」

 その声でハッとする。関口が移動を促すと、それぞれが席を立ち、ぞろぞろと教室を出ていった。

「カト、私たちも行こう」

 京子がまた、可愛い笑顔で言う。

「ああ」

 そう言って立ち上がった時だ。

「うわっ、でかい」

 そんな声が耳に落ちる。と同時に、クスッと笑い声。

「は?」

 ちょっと不機嫌な声を出しすぎたか。その声に振り向くと、そこには陽が立っていた。その後ろには亜美。さっき『でかい』と言って笑ったのは亜美だ。

「何センチあるの?」

 答える必要あんのかよ。そう思いながらも、ぎこちなく笑いを零して見せた。

「何で?」

 そう言うのがやっとだ。

 いくら言葉使いが男だからって、中身は女なんだぜ。でけぇって言われて喜ばねぇよ。しかも思いっきりコンプレックスだっつうの。

 どんな男もでかい女は嫌だろ。

「えー? 興味があったからよ。えっとぉ、陽が百八十五でしょ? それより少し小さいから~」

 一生懸命、陽と俺を交互に見て計算してやがる。はいはい、あんたは小さくて可愛いでございますね。

ああ、うぜぇ。っていうか、陽も俺を見てるって事は、俺の身長に興味あんのか?

「カト、行こう」

 京子が俺の腕を引っ張った。

「あ、ああ」 

「あ、ちょっと待ってよ」

 成るがまま、俺は京子に手を引かれ体育館に向かった。

 これって、俺が嫌がってるのわかって、助けてくれたのか? だったら、京子って、なんて良い奴なんだ。可愛いうえに性格も良いなんて、男がほっとかねぇ。

 おまけに、やっぱ小さいし……。

 そこまで思って、なんとなく落ち込んだ。

 そうだよな、やっぱ陽も、こんな可愛い子に好かれた方が嬉しいに決まってるよな。俺が男でも、きっとそう思う。

 こんな俺より、京子みたいな子に好かれたいって……。

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