AKIRA
悪気もくそもない気さくな奴だって。でも、今は京子の前で、昔のようにじゃれ合うなんてできるか。
「いや、別に……」
「なに? 俺に用でもあったんだろ?」
また、啓介が笑う。口端をあげて、悪戯っぽく。
ああ、変わってねぇな、こいつ。って浸ってる場合じゃねぇ。
「お前」
俺が呟くと、啓介は「なになに?」と、俺を見る。
「お前、よくわかったな」
「何が?」
「いや、俺だって……」
お前が俺をわかったて事は……。
「え? 昔は男っぽかったのに、こんなに綺麗に成長したお前を見て何でわかったかって事?」
「はぁ?」
何言ってんだコイツ。
「そりゃすぐわかるっしょ」
「なんで?」
「だって俺ら昔はずっと一緒に居たんだぜ。幼稚園の時から八年も一緒に居たのに間違える訳ないじゃん、ば~か」
馬鹿は余計だっつうの。
「そ、そっか……そう言えば俺ら、嫌んなるほどつるんでたもんな」
啓介が俺をわかるって事は、陽も俺の事……そう考えたけど、違うんだな。確かに俺は、本当にずっと啓介と一緒だった。
でも、陽といたのは、たったの一カ月だ。
わかる訳ないんだよな……なんか、矛盾してるな俺……陽に、気付いてほしいのか欲しくないのか、全然わかんね。
「じゃぁ、か、カトと服部君は、お、幼馴染みたいな、ものだよね?」
京子が、まだ震える声で聞く。
だから、俺はそれを安心させてやりたくて頷いた。