AKIRA
「まぁ、そんなもんかな」
「そう、なんだ」
わ、京子の奴、すっげぇ安心した顔してやんの。
やっぱ可愛いや。
「で、晶が俺を呼び出したのはそんなこと聞くためなのか?」
「あ、いや、そうだった……あのさ、実は」
「なになに?」
「俺を名前で呼ぶのやめろ。でないとぶっ殺す」
「へ?」
きょとんと、啓介の眼が丸くなった。
「なに? 晶は晶で、ほかに何なの? 何で俺ぶっ殺されるの?」
「いや、だからさ、つまり……呼び慣れねぇっつうか、カトでいいっつうか」
「呼び慣れないのは俺の方じゃね? なんで今まで晶って呼んでたのに、いきなりそんなカトなんて呼べんだよ」
まぁ、確かに、そうなんだけど。
「なんか、理由ある?」
勘ぐるように啓介が俺を見る。いや、陽に名前、知られたくねっつうか、そんな事が言えるかっての。
でも、何で俺、こんなにアイツに名前知られたくねぇんだろう……なんか、そんなこと聞かれたら俺自身が分からなくなってきたじゃねぇか。
「いや、その……」
啓介が不機嫌そうに俺の言葉を待ってる。
「前の学校で、そう呼びなれちゃって、今、お前に晶って呼ばれても、反応出来ねぇっつうか」
「ふぅ~ん」
あ、こいつ明らかに疑ってる……だよなぁ、いきなりそんな事言われても、俺でも納得できねぇわ。
そんな事を思ってると、啓介は、ふぅっとため息を落として、指先で俺の額をピンっと弾いた。
な、なんだ?
「おい」
今度は、啓介よりもかなり不機嫌そうな声が飛んできた。
それぞれが、その声を見やる。