AKIRA
いつものようにうるさいギャラリーに、心の耳を塞ぎながらコート内に入る。
「お願いします」
そのまま、俺は体をほぐすストレッチに入った。
「マネージャ―の試験いつでしたっけ」
一人の先輩が、新部長になった寺倉先輩に聞いた。
マネージャーか、そう言えばここはそんな試験みたいもんがあるって言ってたな。
「今年も多そうですね、マネージャー候補」
その言葉に寺倉先輩が「ああ」と、フェンス向こうを流し見る。
まぁ、俺や晶には関係ないけど……あのギャラリーはマネージャー狙いか。
「あれね、まだ本多は決め兼ねてるよ。あの通り、今年の候補がいっぱいいるみたいだしさ、難しい問題作ってやるとか張り切ってたし」
本多とは、テニス部の顧問だ。
俺はそんな話を耳にしながら、ラケットを持った。そして、ベースラインに立ち、サーブ練習を始めた。
打つ度に、女の声がうるさくて仕方がない。
頼むから、黙っててくれないかな、集中出来ねぇ。
他にも目当ての部があるだろうに、バスケ部にも結構女子がたまってんのみた事あるし、サッカー部だってそこそこ、頼む、そっちに流れてくれ。
そう思いながら、ふと、そのギャラリーに目を向けた。
途端に、俺は自分の目を疑ってしまった。
「な、んで……あいつが……?」
その中に、晶の姿を見つけたからだ。
周りより一つ頭飛び出たでかい女だ、目立つっつうの。
そんな事より、なんでお前がそこに居るんだよ!
そう突っ込み怒鳴りたくもなった。