AKIRA
そのギャラリーは、お前のいる場所じゃないだろ!
ほとんどがマネージャー希望なのに、なんでお前が……晶はプレーヤーだろうが!
なにマネージャー候補の位置に馴染んでんだよ!!
それでも何も言えずに、ぐっとラケットを持つ手に力が入った。
早くコートに入れ!!
だけど、晶はなかなかコートに入ってくる気配がない。今日も来ない気か?
もちろん俺は、そんな晶が、気になって仕方がない訳で……練習に身が入らない。
くそ、何キョロキョロしてんだよ、お前のいる場所はそこじゃねぇだろ。
そう思っていた時だ。その晶の背後に近付く影に気付いた。
あ、あれは……服部。
服部は、俺とほぼ同じくらいにテニス部に入部してきた。アイツも同じく、中学の頃から、藤木に来ていたから知らない訳じゃない。
南中出身で、上級者レベルに入るだろう。
でも、その服部がなんで、晶の後ろに……そう思っている間にも、服部は晶に声をかけたようだ。
慌てている晶が、両手で服部の口を塞ぐ。
何やってんだ! 晶の奴! なんでそいつに触ってんだよ、しかも仲よさそうにしやがって……離れろ!!
それでも、俺はポーカーフェイスを保ち、テニスに打ち込んでいる姿を崩さなかった。
内心は、それに反して嵐のように荒れ狂っているというのに。
あ――――っくそっ! イライラしてきた。
晶は、服部と知り合いなのか?
心がどうにも穏やかではない。
でも、そうだ服部は南中だ。その中学に行くのは南小の奴だ。勿論晶も南小だった……その頃の、知り合いなのか?
やきもきしながら二人を見ていると、晶が服部の手を引いて遠ざかるのがわかった。
あ、おい、どこへ行く!
そう思うも、あからさまに追いかける事が出来ない。
どうする、どうする……もしかして、晶が俺に昔の事を隠すのは、そいつのがいるからなのか?
だから、晶は……嘘を……。
――そいつが、お前の好きな男なのか?