AKIRA
そうなると、既に俺の集中力は敢え無く崩されていく。
入るはずのサーブ練習も、うまく入らない。力が入り過ぎてネットに引っ掛けてばかりだ。
くそっ! マジで気になって練習にならねぇ!!
しかも、二人が校舎裏へと姿を消したってのは何だよっ!
あそこは誰も来るようなところじゃないだろ。なんで晶は、服部をそこへ連れていくんだ。
そのまま俺は、悶々とした気持ちがすっきりすることはなく、苛立った感情のままラケットを地面に叩きつけた。
「くそ」
「おい、江口……何してんだよ」
寺倉先輩の驚いた声が耳に届く。
「いえ、別に……」
そう言いながら、俺は手の甲で、額から流れ出る汗を拭う。
「なんか調子悪いのか? さっきから全然球も切れてないし、何より入ってない」
「……すみません」
俺は力なく呟いた。
わかってんだよ、そんなこといちいち言われなくても……原因だってわかってんだ。
俺はそう思いながら、晶が服部と消えていった方を見据えた。
この苛立ち半端ねぇ……俺、かなり嫉妬してる……。
「すみません、ちょっと」
そう言って俺はベンチに向かい、ラケットを置き、コートを出た。
はたから見れば冷静に見えるだろう。でも、心の中は全然、真逆だ。
なんで俺じゃないんだ。なんでそいつなんだ。
晶、なんで俺に気付いてくれないんだ。
誰にも触れさせたくない。
だれにも渡したくない。