AKIRA


 そのまま俺は、晶の片耳に指先を宛がい、摘みあげた。

「痛ぇ!」

 当たり前だ! そんな叫びを心にあげて、思いっきり晶の耳元で、大声で怒鳴った。

「なにマネージャー候補のギャラリーに混ざってんだって聞いてんだろ!」

 あ、大きすぎたか、声。

「な、なんで……」

 なんか悪ぃと思って、すぐさま手を放してやった。

 でも、なんで? ときたか……。

「先生の机に、お前の入部届けがあったから言ってんだよ」

 これは嘘じゃないんだから、いいだろ。つうか、入部届け出す事態おかしいっつうの気付けよ。ま、俺の意志は伝えたし、このまま晶が入ってくれれば言う事ないんだが。

「早めに入れよ」

 そう付け加えて、俺は再び踵を返す。

「行くぞ、服部」

 でも、晶のあの驚きよう……可愛かったな。そう思い、歩きながら視線だけで晶に振りかえる。

 そのまま、晶に向かって舌を出した。

 早く気付けよ、俺の事。

 俺がどんだけお前を待ってると思ってんだよ。



 いつか、またお前とテニスできる日を、どんなに待ちわびたと思ってんだよ。



 早く来い。



 俺と同じコートに、早く立て。




 つうか、なんか、指先が熱い……晶に触れた、指先――……。





 お前の一つ一つが愛しくて堪んねぇ……だから早く、来い……俺の元に。




 そう願って止まないのは、やっぱ、お前じゃなきゃダメだって、俺の心が言ってるからだ。






 そして、指先は、お前以外に触れたくないと感じている。





~ 名前:陽side FIN  ~

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