AKIRA
「……ですから、やる気のない人はすぐにわかるので、すぐ辞めてもらいます」
やる気か、俺はあるぞ。
「そこの一年!」
そう平塚先輩が大きな声を出して、俺の方を睨んだ。
何、俺?
「あなた名前は?」
「え、っと。加藤です」
「そう、加藤さん。あなた言ってる傍からそんなんじゃ、退部一号になるわよ?」
「え?」
何の事だ? 横に並んでる一年を見ると、俺を見ながらクスクス笑ってやがる。
「あの……」
「加藤さん、私の話聞いてた?」
「あ、いえ、すみません」
平塚先輩は、呆れたように大きくため息を落とした。
「だから、男子目当てで入ってくるような人はいらないの。あなたさっきから私の話も聞かないで男子コートばかり見てたわよね?」
否定できねぇ……。
「すみません」
「やる気あるの?」
そう聞かれて、俺はすぐさま「あります!」と答えた。でも、すぐには信用してもらえないようだ。
「ここはテニスをしに来るところなの、男子を見に来てるんじゃない」
「はい」
わかってる。
わかってるけど、なんか陽と一緒に、またテニスが出来るかと思うと嬉しくて、つい。
まぁ、一緒にって言っても、隣のコートだけど……。
でも、テニスは嫌いじゃないんだ。軽い気持ちで入った訳じゃねぇ。
「ちなみに聞くけど、あなた経験者? 答えによっては判断が違ってくるけど」
判断ってなんだよ。
ちょっと陽を見てただけで退部にさせられんのかよ。って、見てる俺も悪いんだけど。