AKIRA
前島って、いつも藤木と県予選で争ってるライバルだったか? ここ最近はいつもこの二校が決勝で、藤木はあと一歩及ばないんだったっけ。
何でも、前島は中学で目ぇつけた選手をことごとく奪ってくって聞いた……。スポーツに関しては全般に力入れてるらしいからな。つか、俺もそう言えば言われたっけ。
中学の先生に、ここに行くなら、前島行けって。でも、俺は藤木を選んだんだ。
俺が藤木を選んだ理由は、やっぱ陽がいるかもしれないからだ。ま、それも当たったけど。陽なら、きっと一番強いとこには行かない。そう思ったんだ。
あいつなら、自分の腕で勝負して、二番手を上へ押し上げるだろうって思った。
その方が遣り甲斐もあるし、俺もそう思うから。
って、待てよ……先輩、木下って言ったよな?
「あの、木下って、もしかして」
そう聞くと、平塚先輩は「あそこに」と、外周を走る一年を指差した。
その中に、あの木下亜美がいる。
なんで?
「木下もかなりいい選手よ。大会での実績は少ないけど、ここ最近で延びて来てるわ」
へぇ、亜美って、いつも陽にくっ付いてて、何もできない奴かと思ってた。
アイツも頑張ってるんだな。ちょっと、見る目変わったかも……。
「これからの練習が楽しみだわ!」
平塚先輩は、そう言うと集合をかけた。走っていた一年もわらわらと寄ってくる。その中に居る亜美が、俺に気付いた。でも、そこに笑顔はなくて、なんか睨まれてるっぽい。
「お~い、アキ! 頑張ってるか~!」
でけぇ声出すな、啓介!
向こうのコートから、啓介が大きく手を振ってくる。その横には陽が……啓介の奴、誤解されんだろうがっ!
「何よ、アイツ、誰よ!」
ほらみた事か、一斉に啓介ファンのギャラリーからも睨まれている事は確実。
俺はいいよ、俺は……別に啓介のファンに誤解されようがされまいが。でも、陽にだけは変な誤解されたくねぇんだよ!
俺は啓介に向かって舌を出してやった。二度と喋りかけんな!
なんか、既に疲れてる俺って……まったく、前途多難な部活になりそうだな。