AKIRA
         



 ◇◆◇


 えっと、目の前が真っ暗で、あれ、俺、目ぇ閉じてるな。なんでだ? 入学式出てて、それから名前呼ばれるの待ってて……それから。

 薄らと瞼を開けた視界に、白い天井が映し出される。

「あ、れ?」

 ここは、体育館じゃねぇ。

「目、覚めた? ここ、保健室、わかるか?」

 この声――……優しい声……アキ、ラ?

 まさか。

「うわっ!」

 思わず飛び起きた目の前に、陽がいた。ベッド脇の椅子に腰かけて、足組んで。

「な、なんで、いんの?」

「は? お前が体育館で倒れたから」

 ヤバイヤバイヤバイ……また心臓がおかしい。ドキドキがとまんねぇ。

「で、で、で?」

「で? 俺が運んでやった」

「マジでっ?!」

「マジで」

 か――――っ、大失態だ!

 俺は頭を抱え込み、前屈みに布団に突っ伏した。

 なんでだぁ! 俺とした事が! 好きな男の前で情けねぇ!

「そんな落ち込む事か?」

 落ち込むよ、落ち込むに決まってる。

 小さい女なら、こんな時喜ぶんだろうけど、お、俺はただでさえ「でかい」んだぞ。

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