AKIRA
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「ア~キ~」
おいおい、啓介。何で教室にまで来てんだよ。
啓介は、俺が帰って来たと知ってから、毎日のように、いや、毎時間のように俺のクラスに顔を出すようになった。
「なに?」
冷たい視線をぶつけても、啓介は何食わぬ顔。俺の方が緊張するよ。
ちらりと、俺は横を見やる。
陽は、あっちを向いて机に突っ伏し寝ている。
「何って、アキに会いに来てあげてるだけだよ。新しい学校で同級生も少ないアキを心配してだね」
なんて戯言抜かしてる啓介は放っておきたい。のは山々なんだが、京子がいるから足蹴にも出来ない。少しでも、好きな人の傍に居させてやるってのは、俺の傲慢になるのかな。
「京子、お願いですから、この啓介の相手してやってくださいませ」
「え?」
赤らめた頬を隠すように、両手を宛がう京子は可愛い。
「え、長田さん俺の相手してくれんの?」
なんて、啓介もまんざら嫌でもなさそうじゃん。
「ねぇねぇ陽~お昼買いに購買まで付いてきてぇ~」
そう、こいつと違って。
前言撤回。見直したってのは言い過ぎだ。だって、亜美はいつも陽にべったりで、なんか俺の前でやたらべったべたで……気にいらね。
彼女なのか彼女じゃないのかはっきりしねぇし、俺の心はいつも悶々としてる。
相変わらず甘い声で亜美が、陽の肩を揺らしながら言った。ったく、そんなもん一人で行けよ。
「うるせぇな、そんなもん一人で行けよ」
突っ伏したままの陽が、俺の考えと同じ事を言った。なんか、内心嬉しいのは俺だけか?
「ヤダ、陽に選んで欲しいの!」
そう言って無理やり陽の腕を持ち上げ、上半身を起こした。
「お前、自分の食いもんくらい自分で選べよ」
「だってぇ」
だって、じゃねえよ。
そう思って、ふと、古い記憶が蘇える。
『女なんか大っ嫌いなんだよ!』