AKIRA
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俺はいつも教室で、晶の姿を見ているだけで、その声を聞いているだけで、今は満足してるんだよな。見つめる事は出来なくても、隣に居るって感じるだけでいい。
「おい、陽、数学の岩田、今日休みだって」
「へぇ」
「助かったよ、俺、予習して来てないもん、あいつすぐに誰にでも当てるからわかんねぇんだよな」
「そうだな」
そんな他愛ない話の声の中にも、俺の中では晶の声だけがやけに大きく存在する。
「ア~キ~」
くそ、服部の奴、また来やがった。
「なに?」
晶、あんまりそいつに構うなよ……俺の平常心がどっかに行っちまうじゃないか。仲良く話してるとこなんか見たくねぇ……だったらその中に入ればいいじゃんって思うけど、なかなか出来ねぇし……ああ、俺ってへタレかよ。
俺はそのまま、なるべく視界に服部を入れないように机に突っ伏した。
「何って、アキに会いに来てあげてるだけだよ。新しい学校で同級生も少ないアキを心配してだね」
また服部の奴、抜け抜けと言いやがる。
「京子、お願いですから、この啓介の相手してやってくださいませ」
ナイス、晶!
「え?」
「え、長田さん俺の相手してくれんの?」
お前は女なら誰でもいいのかよ。
でも……あの時の、服部の瞳は真剣だった。