『いつか、また』

そんな中、10月も終わりになろうとした時、母の身体は異変を起こした。
そう、あやに兄弟が出来ていたのだ。
産気付いた母は、あやが産まれた病院とは違う病院に運ばれ、あやが産まれた時より少し大きくて、泣き声も激しい男の子を産んだ。
あやは弟を見て、何とも言えなかった。
嬉しい。なのに、寂しい。

弟には『陸斗』と名付けられた。
陸斗にママとパパを取られる…！

可愛いげのない気持ちである事は承知の上でも、何故か喜べなかった。
陸斗が家に来てからも付きっ切りな母。そして仕事で居ない父。
祖母だけが唯一甘えられる存在で、自然と家に寄らず祖母の家に居座るようになった。
きっと家に帰ったら、母の邪魔しかしない。甘えたくても、今は二番目。我慢すればいい。何事も。
強がりな性格になればなるほど、あやは体調を崩した。
母の機嫌を伺ったり、父の飲む酒を注いで笑顔を見せ、精一杯自分を繕った。
陸斗の面倒も見て、姉になった以上はみんなを守ろう。
その一心で甘える事も、泣く事も我慢し続けた。

その時だった。
あやは高熱を出して倒れたのだ。