誠-巡る時、幕末の鐘-
―――夕暮れ時
「土産も買ったし帰るか」
「……そうですね」
響の父親はとうとう見つからなかった。
もともと人口が少なくはないこの京で人一人探すのは至難の技だ。
「そう落ち込むな。今日見つからなかったからといって明日からも見つからないという訳ではない」
「そうですね!」
「さぁ戻ろう」
「はい。……あの方は奏の知り合いの方ですか? ずっとこちらを見てるんですけど」
(なに? 響目当ての奴か?)
奏は響の視線の先を追った。
「……っ! 鈴!」
奏は誰から見ても分かる狼狽の表情を浮かべていた。
フッ
奏がこちらに気づいたことに気づき、男は口の端を上げた。
そして、まるで霧のように消えていった。