誠-巡る時、幕末の鐘-
「…あの方も妖なんですか?」
「あ、あぁ」
奏は男が消えた場所をしばらく見つめ、何かを吹っ切るように頭を振った。
響はそんな奏の様子を見て、これ以上聞いては駄目だと悟り、何も尋ねなかった。
道には二人の影が夕陽に照らされて長く伸びていた。
……チリン
奏達がその場を去った後、またあの男が現れた。
腕につけている鈴から音が鳴る。
その男…鈴は奏が自分の名前を呼んだことを思い出し、再び口の端を上げた。
「…やっと見つけたぜ…奏」
そう言うと、鈴は名残惜しそうに奏達が去った方を見つめ、再び姿を消した。
見つかった鬼は…もう隠れられない。
あとはただ、運命の歯車が回り出すだけ。
歯車を止めることは誰にもできない。
……神ですらも。