誠-巡る時、幕末の鐘-



「…あの方も妖なんですか?」


「あ、あぁ」




奏は男が消えた場所をしばらく見つめ、何かを吹っ切るように頭を振った。


響はそんな奏の様子を見て、これ以上聞いては駄目だと悟り、何も尋ねなかった。


道には二人の影が夕陽に照らされて長く伸びていた。




……チリン




奏達がその場を去った後、またあの男が現れた。


腕につけている鈴から音が鳴る。


その男…鈴は奏が自分の名前を呼んだことを思い出し、再び口の端を上げた。




「…やっと見つけたぜ…奏」




そう言うと、鈴は名残惜しそうに奏達が去った方を見つめ、再び姿を消した。





見つかった鬼は…もう隠れられない。


あとはただ、運命の歯車が回り出すだけ。


歯車を止めることは誰にもできない。


……神ですらも。



< 101 / 972 >

この作品をシェア

pagetop