誠-巡る時、幕末の鐘-
奏はまるで心臓が凍っているかのような錯覚に陥った。
「……あんた、誰だ?」
鈴が今まで黙りながらも奏の変化を心配していた響に目をやった。
「わ、私は…」
(響、駄目だっ!!)
「…っく!! 離せっ!! 響、来い!!」
「え!?」
奏は響の手を掴むと、必死に走り出した。
いきなり手を掴まれ、走り出した奏に驚きつつも、響は奏についていけるように一生懸命走った。
普通の奴ならここで逃げた者を追いかけるだろう。
だが、鈴はすぐには追いかけることはしなかった。
「今度は鬼ごっこか? …って俺達がやったんじゃ洒落(シャレ)になんねぇな」
そう言い、鈴の姿は霧のように消えた。