誠-巡る時、幕末の鐘-
「ハァハァハァ。……さっきの方は?」
響は乱れた息を整えながら奏に尋ねた。
奏はいつになく顔を真っ青にしていた。
「奏!? 大丈夫ですか!?」
「あぁ。もう少し遠くまで……あそこに行けば」
奏は京の北に鎮座されている貴船の龍神のことを考えた。
まだかなり距離があるが、捕まるよりマシだ。
(あのお方ならば……助けてくださる。
ほとぼりが冷めるまであそこに……)
「どこ行くつもりだ?」
「……っ!」
横から声がしたと思った時には、もう捕まっていた。
奏が離れようと瞬間、肩に鋭い痛みが走った。
だが、何とか響を庇い後退するのには成功した。