誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏! 血が!」
奏の肩からは血が滴り落ちていた。
鈴は腰の鞘から刀を抜いており、それによって傷つけられたらしい。
(後手に回るなんて! 不覚!
なんとかして響だけでも逃がさないと!)
「……っつ。大丈夫だ。先に屯所へ戻ってろ」
「でも!」
響が顔を歪め、拒否した。
「いいから! いいな、このことは誰にも話すな」
「できません! 奏を置いて行くなんてそんなこと!」
響は必死にこの場に残ることを訴えた。
だが、今回だけは言うことを聞いてやれない。
奏は響の強情さに唇を噛んだ。
「聞き分けのない奴だな。折角奏があんただけは逃がしてやろうとしてんのに」