誠-巡る時、幕末の鐘-



「あ〜あ。最後の別れくらいゆっくりさせてやろうと思ったんだけどな」


「嘘をつくな! さっき響を斬ろうとしてたくせに!」


「あんまり傷つけると紫翠(しすい)に怒鳴られるからな。おとなしくついて来ないか?」


「何をっ! 風戸(かざと)の里になど絶対に行くものか!」


「お前な……。紫翠が諦めるわけないだろ?」




(やはり……紫翠か。

私を連れて来させようとしているのは)




奏の脳裏に一瞬過去の記憶がよぎった。


いつもは頭の隅、心の奥にしまわれている記憶だ。




「今まで手を出さなかったということは最後の別れをさせるため……ということか」


「正解だ。……さぁ行くぞ」


「嫌! 行かない!」




奏は鈴が伸ばしてきた手を払いのけた。



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