誠-巡る時、幕末の鐘-
鬼の目にも涙
―――屯所
「おい!! 本当に奏は帰って来るんだろうな!?」
土方が響に般若(ハンニャ)のごとき顔で問い詰めていた。
「…っ!! 必ず…必ず戻って来てくれます!!」
響は目に大量の涙を浮かべている。
怒鳴られて怖い訳ではもちろんない。
自分一人だけが屯所に戻ってきていることが悔しいのだ。
「すみません!! みなさん!! 私が奏に頼まなければっ!!」
何度繰り返したかしれない言葉を、再び口にしていた。
「泣くなよ。奏は強ぇんだから大丈夫だ」
原田が泣きじゃくる響を宥めた。
土方も内心苛立っていた。
外出させたのは自分だ。
響に厳しく当たってしまった。
……完全な八つ当たりだ。
グスッ
「すみません」
響はこれ以上みんなに迷惑をかけてはいけないと思い、無理矢理涙を止めて見せた。