誠-巡る時、幕末の鐘-
―――奏の私室
「…それで奏君の具合は?」
近藤も出先でこの事を聞き、山南と共に戻ってきた。
「血は止まった。傷も塞(フサ)がってきておる。…だが目覚めるかは本人次第だ」
「…かたじけない。それと先生、彼女の性別のことはここにいる者しか知らないので…」
「分かった。内密にしておこう」
幕府お抱えのご殿医(テンイ)である松本良順は帰り支度をして席を立った。
「誰か先生をお送りしろ!!」
「分かりました!!」
土方の指示に隊士が答え、良順先生を送っていった。
「奏…こんなに…」
響は奏の血だらけになった着物を見て、再びボロボロと涙を流した。
「響。奏をこんな風にできた奴って誰だ?」
「…奏は鈴としか」
とつとつながらも響は精一杯答えた。
「……鈴。一体何者なんだ?」
みんなの中に長い沈黙が訪れた時…
「星鈴!!!」
どこからともなく少女が現れ、奏に抱きついた。