誠-巡る時、幕末の鐘-



『…っ!!』


「おい、それ以上抱き締めると傷口が開くからやめておけ」




いつの間にか、隣には青年が当たり前のようにいた。




「うん。…あなた方は…」




少女はようやく存在に気付いたとでも言うように、首をこちらへ向けた。




「てめぇら…奏を知ってるのか?」




尋ねた土方の後ろでは、もうすでに沖田、斎藤、永倉、藤堂、原田が自分の刀に手をかけていた。




「それも説明するから、場所を移動しましょう。エリオル、刀から手をひいて」




見ると、エリオルと呼ばれた青年も今にも刀を抜ける体勢に入っていた。




「…ちっ」




エリオルは舌打ちをした後、刀をきちんと鞘に戻した。


どうやら少女の言うことには逆らえないらしい。



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