誠-巡る時、幕末の鐘-

誰にでも嫌いな奴はいる




突然空気が変わった。




「……エリオル、奏」


『はい』




土方達は何が起きるのかと身構えた。




「何やら京で異変が起こっていると思って来てみれば、またお前達か」


「申し訳ございません。またって……」




いきなり庭の方から声が聞こえたかと思うと、奏とエリオルが障子をさっと開けた。


するとそこには、長身で狩衣(かりぎぬ)を着た男が立っていた。




(今度は何だ? もう何だって構わねぇ……)




もう人間でないものが入って来ても、大して驚かなくなった土方達であった。




「見慣れない顔だな」




男が土方達の方を興味深そうに見ている。




「こちらは壬生浪士組のみなさんです。こちらのお方は小野篁様。冥府の官吏殿です。漢詩をたしなむ方はご存知なのでは?」




奏が互いの代わりに紹介をした。




(この男が自分から自己紹介なんてするはずないしな)



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