誠-巡る時、幕末の鐘-
「普通にしろ、普通に。なにを今さら畏(カシコ)まって話している」
「大勢の前なので」
ミエはジト〜っと半眼でこちらを見る篁の目線を遮るために、愛用の扇を出してバサリと広げた。
「……お前、天皇だろうと敬語使ったことないだろうが」
「いや……あります…よ? 何度か」
「ないな」
篁は明らかに目が泳いでいるミエを見て、即断言した。
「ありますって!! 主ではなかったから自由にしゃべってただけです!!」
「そうか。おかしいな、俺はお前と主従になったと思ったが? 思い切りくだけてたよな?」
(飛んで火にいる夏の虫? ちょっと違うか?
ミエ様、やぶ蛇です!!)
奏は心の中で叫んでいた。