誠-巡る時、幕末の鐘-



「さて…俺も帰るとするか。あまり長居をすると上に叱(シカ)られる。俺にも酒を持って来いよ?」


「はい。良い物を探しておきます」




ミエは篁が消える瞬間まで手を振っていた。




「行ったか? 行ったな?」


「あぁ。暇人が」




篁がいなくなった途端、奏とエリオルの機嫌が目に見えて悪くなった。




「おい、奏。あいつの酒には毒を仕込んどけ」


「任せろ。この間調合したのが残ってたはずだ」


「なに不穏なこと言ってるの!! 絶対駄目に決まってるでしょ!!」




二人揃ってミエに叱られた。


二人は小野篁という男が大嫌いなのだ。


理由は簡単。


自分達の主はミエ。


ミエの主が篁。


この構図が気に食わない。


ただそれだけだ。



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