誠-巡る時、幕末の鐘-



「見つかったようだな。一件落着。お邪魔虫は消えるとしよう」




そう言い、離れて行こうとした時、男が思わぬことを口にした。




「……奏様?」




奏の名を呼んだのだ。




「あなた様は我が音無家が仕える雷焔家の奏様でしょう?」




(……まさか)




「……爺…?」




そう呼ぶと男は顔を歪ませた。




「やはり、奏様!! またお会いできる日をどれだけ待ち望んでいたことか!!」




(懐かしいな。

また会えるなんて…思ってなかった)




「爺も元気そうで良かったよ。……若返ったな。随分と…かなり」




昔は歳と見た目があっていなかったが、今も歳よりも若く見えるぐらいである。




「こちらが本当の姿ですよ。……あれでないと雷焔家当主の側近としての威厳が」




爺は恥ずかしそうに言った。



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