誠-巡る時、幕末の鐘-
「爺は元老院を知っているか?」
「えぇ、もちろん。元老院が何か?」
「元老院を支える一族の一つ、ローゼンクロイツ・天宮の方々に助けていただいていたのだ」
爺はふわりと笑った。
「そうですか。次に会う時は礼をつくさねばなりませんね」
「あぁ、そうしてくれ。…そうだ!! 響を何故江戸に置いてきた?」
(ん? 爺が父親なら母親は誰だ?)
「少し用が長引いてしまって……母親は輝耀(キヨウ)ですよ」
爺が奏の心を読んだかのごとく答えた。
ならば、やはり…響は。
「響、よく聞きなさい。今までの私達の会話で気付いていると思うが…私達も人ではない」
「……え?」
響は信じられないようなことをいきなり告げられ、眉を下げた。
(そう…音無家は代々雷焔家に仕える鬼一族。
そして私の母様は音無家出身で爺の姉。
輝耀も雷焔家に仕える鬼。
響は……私の従姉妹にあたる)
「響は俺が嫌い?」
「いえ!! ただびっくりしているだけで…」
(……響…教えない方が良かったか?)